東大駒場カルチャーレポート2018(1)概観

 今年度も昨年度に引き続き、東京大学教養学部後期課程(3,4年生)の「比較文化論」で学生の文化体験を発表してもらう授業を行った。

 とにかく、学生諸君の体験談を聞くのは楽しいし、もっと多くの学外の人に知ってもらってもよいと思う。

 彼らが書いたレポートを読むと、少なくとも現在の若者の文化状況の一端とその傾向がわかって非常におもしろい。今年度のレポート全文はこちら。

 レポートの内容は、

 

(1)テレビドラマ

(2)ミュージカル映画(製作)

(3)スーパー戦隊シリーズ

(4)劇団四季ミュージカル

(5)中国でのジャニーズファン

 

である。この中で、(2)は、多くの協力者を巻き込んだ映画製作体験が中心で、当然、製作の前には、非常に多くの作品を視聴し分析しているのだが、集団製作の体験発表というのは、今まで(2009年度、11年度、17年度)になかったタイプの発表であった。

 SNSなどのヴァーチャル空間での人的交流は、(5)もそうだが、これまでも何人かによって報告されてきたが、(2)のような生身の人間同士のface to face の交流を基礎にした体験の報告というのは新鮮だった。頼もしい限りである。

 と言っても、ヴァーチャル空間での人的交流がつまらないということでは全然ない。私も含めて、生身の人間同士のface to face の交流が苦手という人間は必ずどこにもいて、そういう人間は、利用できるものは何でも利用して、グッとくる生きがいをしっかりとつかんで、自らの生を、社会的な環境の中で享受していけばいい。そうした自分の体験は、あとでさらに捉え返すことによって、濃密な体験として意味づけていくことも可能なはず。