東大駒場カルチャーレポート2018(3)同時進行の文化現象とのシンクロ

 学生レポートの一部にも反映されているが、2018年度に同時進行していたいくつかの社会的文化現象やTV番組等と授業がシンクロすることがあって興味深かった。最も大きかったのは、映画「ボヘミアン・ラプソディ」のヒットとこの作品をめぐる評論だったように思う。

 私が気がついて、受講生全員にその朝すぐ回覧した「映画館でクイーン まるでライブ 「ボヘミアン・ラプソディ」広がる客層 劇中の大観衆と一体化」(『朝日新聞』朝刊2018年11月27日「文化・文芸」欄/署名:宮本茂頼)という記事がその代表で、以下のような一節などには、受講生の中からも反響があった。

 

配信大手ネットフリックスが製作した映画がベネチア国際映画祭で最高賞を取るなど、物語性の高い作品がパソコンなど個人的な視聴に流れている。一方で映画館での鑑賞は、映像・音響技術の向上をいかして、ライブ会場のような体感が求められる傾向がある。

 

 個人的物語性とライブ的体感性の対立ということだが、そのいずれもが、確かに今それぞれに訴求力を持っているということは、受講生のほぼ全員に共有された認識だったように思う。

 (1)の報告では物語の「統辞」構造を分析していたし、(2)のミュージカル映画に関する報告は、(4)の舞台のミュージカルとの対比もあったので、「ボヘミアン・ラプソディ」の体感型ヒットは様々なことを感じさせ、また、考えさせもしたように思われる。

 (4)で触れられた浅利慶太は2018年7月13日に死去、BS朝日(2018年12月24日21:00〜22:54)で「劇団四季&演出家・浅利慶太~日本の演劇に革命をもたらした男」が放映された。

 また、(3)の報告が終わったあとだが、NHK総合ドラマ10(毎週金曜22:00〜22:44)で、スーパー戦隊オタク女性が主人公のTVドラマ(全7回)が1月18日から放映された。年末年始に番組予告を見て「おっ」と思った私は、授業の最終回(1月8日)に(3)の報告者に聞いてみたら、すでに承知済みのことだった。(私の予想に反して)このドラマは好評を博し、ストーリー展開や劇中戦隊の作り込みなどで注目された。

 今年は中国人留学生が一人だけだったが、その授業での報告(5)は、明らかに、他の日本人受講生の予見を良い意味で裏切って、新しい中国認識をもたらしたように見受けられた。

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